セッテン通信 032【新年のご挨拶 2018】

【今週の目次】
1. タイポグラフィ塾[ドイツの活字 フツーラ #2]
2. setten designからのお知らせ

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1. タイポグラフィ塾[ドイツの活字 フツーラ #2]

今回も、前回に引き続き20世紀初頭にドイツで生まれた
「フツーラ」を紹介したいと思います。

フツーラはたんに幾何学的に構成されている活字書体だと思われがちですが
実は周到に視覚的な配慮が施されています。

組版表情が均質なグレートーンになるような微調整を加えたり
ドイツ語で組まれることを想定(※1)して「C」の終筆部分を
垂直にカットしたりとさまざまな工夫がなされています。

これ以外にとても重要な特徴として
大文字のキャップハイトと小文字のアセンダーの高さにおける違いです。

キャップハイト説明_600px

19世紀のサン・セリフ体では同じ高さになっているものがほとんどでしたが
レンナーはキャップハイトよりもわずかに高いアセンダーをつくって
大文字の視覚的なボリューム感を減らしました。
(大文字の使用頻度が高いドイツ語ではこれがより効果的)

この考えは長い歴史に育まれたローマン体活字の特徴を
レンナーが十分に理解していたことを示しています。

レンナーは大文字の静的な形態は普遍的であると考え
動的な小文字を大文字に近づけることで両方を結びつけようとしました。
この考えは、ルネサンス期に「ニコラ・ジェンソン(1420–81)」が
小文字に施したアプローチと通ずるものでした。

1927バウワーからのフツーラ見本帳_450px
【1927年にバウワー活字鋳造所から刊行されたフツーラの最初の活字見本帳とその使用例】

多くの風変わりなキャラクタを生みだしながら設計は進みましたが
最終的には慣習的に設計されたノーマルなキャラクタのみでリリースが決定。
1927年に正式にリリースされたフツーラは熱烈に受け入れられました。

フツーラ活字書体見本帳_600px
【バウワー活字鋳造所の活字書体見本帳『フツーラ』に掲載された組見本】

レンナーにとってサン・セリフ体というカテゴリーはありませんでした。
なぜなら彼にとってフツーラとはあくまでローマン体であって
ローマン体の概念をもとに制作していった結果が
サン・セリフ体の形態を持っていたにすぎなかったからです。

これをレンナーはローマン体の最後の形態
「セリフレス・ローマン」だと主張しました。

これらの考察と概念はローマン体からの進化と
サン・セリフ体の発展における分岐点となって
その後のサン・セリフ体に生かされていくことになるのです。

と、いったところで今週はここまで。
次回は石彫り職人エリック・ギルについて見ていきたいと思います。

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おまけコラム(今回は最後まで読んでね)
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「フツーラ = ナチ(ヒトラー)の活字書体」

僕がタイポグラフィを学びはじめたころに
これを聞いてとても驚いた記憶があるのですが
これはどうやら間違った情報のようです。

フツーラは大戦がはじまる10年前に完成。
その「未来」というネーミングとともに
ヨーロッパ中に販売されるなど大流行し
フランスやオランダなど中央ヨーロッパの多くの企業が
ポスター・カタログ・広告に使用しました。

それから大戦になり企業の多くはナチの配下として
ナチが経営する「国営」企業になったため
ダイムラーベンツ社のポスターなどに使われたフツーラは
そのままナチのイメージを伝えてしまったのです。
(ニベアのクリームですらナチのイメージになってしまった)

当初ナチがプロパガンダ(※2)で使用していたのは
ドイツ人のための文字とされていたブラック・レター体で
フツーラではなかったのです。

街中にブラック・レター体を使用したポスターが貼られるなど
国民の愛国心を高揚させていました。

ところが1941年、ブラック・レター体は「ユダヤの文字」だと弾圧され
それまでのドイツの伝統書体とされていたブラック・レター体に代えて
ローマン体が標準書体だと公布されたのです。

この一連のお話がいろいろとミックスされて
広まっていってしまったのではないかと推測されます。

こういったセンセーショナルな内容は
飲み屋でするにはちょうどいいおもしろさですもんね…笑

しかし、人から聞いたことやネットで調べたことを鵜呑みにして
あちこちで触れ回っているとどんな恥ずかしい思いをするかわかりませんね。。
そのためにもしっかりと歴史を学ぶことが大切なんだと思います。

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それでは、今週もタイポグラフィとの良い接点を。

※1 ドイツ語の単語では「C」の次に組まれるキャラクタの多くが
左側にステムがある「H」あるいは「K」になり、組まれた時に2つの文字に
挟まれたスペースに大きな穴ができてしまう。

※2 特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する宣伝行為

[参考・引用元]
Acanthus Typography School
欧文書体百科事典
欧文書体 その背景と使い方

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2. setten designからのお知らせ

明けましておめでとうございます!
本年もどうぞよろしくお願いいたします!

あっというまに年末年始の休暇も終了し
通常営業に戻ってしまいましたね〜
まだまだフワフワしていますが…笑

話は少し戻ってしまいますが
年末の東京出張でひいたおみくじがなんと「大吉」!!
内容はというと…

することなすこと幸いの種となって
心配事なく嬉しい運ですからわき目ふらず
一心に自分の仕事大事とはげみなさい

これ以外にもいいことがいっぱい書いてありました〜
きてますよ!! setten designきてます!!
ついに長い闇から抜け出す兆しがあります笑

さぁこんな運気のいい人といつ飲むの…?!
……!!

ということで笑
皆さんからのお誘いお待ちしております◎

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